時代より早過ぎた天才歯科医師　寿谷一先生

３年前の10月にある天才歯科医師、寿谷一先生がこの世を去りました。寿谷先生は1970年代からアメリカで活躍、LOMA LINDA大学で教鞭をとられ、1983年にはアメリカで最も歴史と権威のあるThe American Academy of Restorative Dentistryで東洋人初、史上最年少で正会員を認められました。これは我々日本人歯科医師として誇るべき事実なのですが、なぜか日本ではあまり脚光をあびることはなかったようです。寿谷先生の研究の多くは、当時の日本ではそんなものが何になるのかという評価であったそうですが、発表から20年〜30年を経た現在でも、当時は早過ぎた斬新かつ天才的なコンセプトが伝承応用され、それに基づいた診断、治療は世界中で確かな治療結果を導いています。

矯正期間を短縮する外科的手法（コルチコトミー併用矯正）は現在世界中で行われていますが、これが寿谷先生の考案したものであることを知る日本人歯科医師はほとんでいません。寿谷先生の理論をまねて自分のものとして発表されたものも多くありますがアメリカでは偽物は消えていっており、寿谷先生の功績は日本歯科界以上に正当に評価されています。

寿谷先生の一番弟子であり、私の師匠である神奈川の西川洋二先生のグループでは、寿谷先生の一番の功績である咬合・顎関節分野での手法を特許申請し、寿谷先生の功績を正しく伝えていこうとしています（「顎偏位是正用アプライアンスの製作方法」特許第6146905号）。この天才的手法の使用を制限するためのものではなく、寿谷先生の発案したものと明記して発表等に使うことを目的とし、功績を世に広めるためのものです。実は寿谷先生のオリジナルでは画像診断に「サジタリウス3000」という装置が必要なのですが現在製造されておらず、当時入手した歯科医院以外での撮影ができなくなっています。やむを得ずCTを応用して同じ手法で診断することが可能ですが、オリジナルの実績にはまだ追いついていないのが実情です。

私は寿谷先生に直接お会いしたことはありません。しかし寿谷先生に最もこだわり続けている西川先生の神のような治療と「寿谷にしてもらったことを世に伝え、患者を救いたい」という思いに魅かれ、しかし全然足りない自分を省みながら研鑽をしているものです。

待ち合い室に寿谷先生のイラストエッセンスを置いていますのでぜひご覧下さい(^^)