自立支援介護 -人間の尊厳-

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自立支援介護 -人間の尊厳-

コラム

2024/06/01 自立支援介護 -人間の尊厳-

 先月当院の関連施設である特別養護老人ホーム多聞荘の施設長と作業療法士と共に、日本自立支援介護・パワーリハ学術大会に参加して来ました。この学会については以前も書いたことがありますが、私は非常に関心を持っています。皆様は将来自分に介護が必要になった時、どのような生活を望まれますか?

 

 人は誰でも年齢を重ね年老いていきます。身体的に筋力が減少し活動性が低下することで、心理的にも社会的にも虚弱となってしまう、あるいは逆に社会的な孤独や心理的な要因から身体的虚弱になってしまうこともあります。このような虚弱状態をフレイルと言い、適切な処置やトレーニングによって健康な状態に戻ることができますが、フレイルがさらに進んで要介護状態となってしまうと回復は難しいと言われています。

ところがこの自立支援介護では、様々な取り組みによって認知症が改善した、オムツが不要になった、食事が常食に戻せた、歩けるようになった、など介護度の改善や、さらには介護保険からの卒業を目指している・・そんな驚くべき事例報告や施設が多数存在します。誰しも寝たきりで食事を流し込まれ、排泄もオムツで、薬で意識がうつろな余生を過ごすことは望まないでしょう。

 

 自立支援介護の基本ケアは一日あたり水分1500ml、栄養1500kcal、運動2km、3日以内の自然排便です。そのために重要なことが2つあります。まずしっかり食べれるようなお口の状態(入れ歯)をつくることです。自力で常食を食べることは、最も安全で効率的栄養摂取であり活動性を向上させます(「高齢者に噛める喜びを」2016年2月号他)。次に薬剤を減らすことです。高齢者の服用している薬の多くは不要なものが多く、目まい、しびれ、湿疹、うつ、脱毛などの副作用に対して、さらに別の科のお医者さんが薬を出すという笑えない現実があります。

 

 今回の学術大会の発表でも、98名の認知症高齢者に対する向精神薬の減薬による効果の研究がありました。認知症患者のお世話では、原因を改善する前に症状を抑えるため薬剤による対処療法が広く行われています。この研究は不安を取り除く原因療法に併せ減薬に取り組むことで、症状の有意な改善が認められたというものです。

 

 フランスでは、世界中で広く使用されている認知症治療薬4剤の公的医療保険の適用を、2018年から除外しました。これは副作用によるリスクが大きく効果が不十分なため、薬物療法よりも包括ケアに転換するというフランス保健省の決定です。同じ薬は日本の臨床試験でも十分な効果が認められませんでしたが、それでも承認されたのはこれらの薬が海外で使用されているという理由です。認知症治療薬は日本人85歳以上の17%に処方され、他国に比べて数倍の消費量です。
認知症に限らず、薬に偏重した治療法を見直す必要があるのではないでしょうか!?

 

 

 

 

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院長 長島 義之
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