笑気吸入鎮静法

私が大学院４年生のある日、突然上司である教授から「明日から麻酔科に行ってくるように、しっかり勉強して帰ってきなさい」と言われ、歯科麻酔科に出向していました^^;;
期限も分からないまま、それまでと全く異なった環境の中がむしゃらに過ごした結果、気がつけば半年ほどの間に100例ほど全身麻酔を経験していました。全身麻酔をかけるということは、患者さんの術前、術中、術後の全身管理を行うということであり、手術チームの中では非常に重要なポジションの一つです。もちろん指導医がいたからこそ可能だったことですが、麻酔中に生命維持全般を受け持つことは貴重な経験でした。

最近の患者さんで多いのが、当院に笑気吸入鎮静器があることを何かで調べて来院される方です。笑気とは亜酸化窒素の別名で、このガスを吸うと笑ったような顔になることからそう呼ばれるようになったようです。

笑気は他のガスと併用することで全身麻酔にも使用されていますが、様々な理由で全身麻酔での使用は減っています。一方導入・覚醒が迅速で、非刺激性、呼吸・循環抑制が軽度で、臓器毒性もないという利点があり、吸入鎮静法では笑気ガス以外の方法はありません。30%以下の笑気ガスを高濃度酸素と一緒に吸引することで、安全に鎮静効果をもたらします。「ぼーっとした」状態で、リラックスでき、痛みも感じにくくなります。

歯科治療中に気分が悪くなったり、血圧が上昇したり、というような不快症状は、ほとんどが不安や恐怖心が原因です。一度気分不良の発作を経験すると、不安から再発をしやすくなりますが、笑気吸入鎮静法によりリラックスすることで発症を予防することができます。また嘔吐反射が強く、型取りが苦手な方も笑気吸入鎮静法により可能となることも多くみられます。処置の終了時には吸入をやめれば直ちに覚醒、排泄されるため、数分で車の運転も問題ありません。

当初は主にお子様の治療のために導入した笑気吸入鎮静法ではありますが、大人の方にも多くの恩恵があり、大変重宝しています。ご興味があればぜひお問い合わせ下さい(*^^*)